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藻岩山

札幌の観光名所でもある藻岩山は、中心街の南標高531mに位置し、石狩平野を一望に見下ろす眺望のすぐれた山です。
別名「インカルシペ」。アイヌ語で“いつもそこに上って眺望する所”という意味を持ちます。
この山の森林は、開拓使時代から保護され、大正4年に北海道庁の原生天然保存林になり、さらに大正10年にはに天然記念物に指定されました。
原始林といっても、原生林に近い天然林。シナノキ、エゾイタヤなどの広葉樹林が生え、サワシバ、オヒョウ、シウリザクラ、ヤマモミジ、アオダモなどが混生しています。昔は谷沿いにカツラ林がありましたが、今ではほとんど姿を消し、ミズナラ林やウダイカンバ林も、名残が見られるだけになっています。
春になると木々が芽吹くと同時に、野草が色彩豊かな花を咲かせ、夏にはセミの声を聞きながら、約450種の植物たちを散策できます。紅葉の秋にはムクドリが群れ、冬になるとフクロウが顔を見せるなど、心を豊かにしてくれる自然がいっぱいです。
藻岩山で発見・研究された植物や昆虫には、現在でも「モイワ」の名前が付けられているそうです。
「モイワの名がつく植物」 モイワナズナ、モイワシャジン、モイワラン
「モイワの名がつく昆虫 」 モイワウスバカゲロウ、モイワハバチ

また、天然記念物のクマゲラやエゾリス、キタキツネ、日本の国蝶のオオムラサキなども生息していますよ^^

南西斜面は数回の山火事にあい、原生林が焼失してしまいましたが、戦後は市民スキー場などに利用。現在は、ロープウエイや有料道路で山頂へアクセスでき、多くの観光客が訪れる人気スポットです。
山頂展望台からは、札幌の街並み、雄大な石狩平野や石狩湾の広がり、遠くには雄大な山々が連なる絶景を一望できます。
オレンジ色の宝石が輝いているような夜景は、ロマンチックな北海道三大夜景の1つ。煌びやかな札幌の夜景に、心の底から感動する最高のひとときが味わえます。

日本には100ヶ所を越える「恋人の聖地」がありますが、藻岩山もその1つ。2012年7月1日に「恋人の聖地サテライト」に認定されました。展望台には、「幸せの鐘」や永遠の愛を誓い合う「南京錠」が取り付けられ、プロポーズにふさわしいスポットとして大人気です。
南京錠に、ふたりの名前を記して取り付けると、そのカップルは絶対に別れないという伝説。幸せの鐘を鳴らし、永遠の愛を誓えば、きっと幸せな未来へと繋がっていくでしょう♡♡♡
昔と違って今の男子は、プロポーズにも特別の拘りがあって、なかなか見事な演出をするようですね。夜景は必須アイテム。是非、この藻岩山の夜景を見方に、男子諸君、頑張って下され!!

シマフクロウ

目:フクロウ目
科:フクロウ科
全長:65~70cm
翼開長:175-190cm
体重:オス3.1kg~3.6kg、メス3.6kg~4.4kg

最近は見た目の可愛らしさからフクロウカフェなんてのも流行ってますね。
フクロウと一度触れ合うとその魅力のとりこになるのだとか・・・。
ペットに飼いたい!もしくは飼ってる!なんて人もいるんじゃないですか?

そんなフクロウの中で一番大きいと言われていて、可愛らしいと言うよりは凛々しい顔立ちをした「シマフクロウ」という和名のフクロウがいます。

日本では1971年に国の天然記念物に指定されています。
また、1993年には種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種にも指定されました。

ちなみに「シマフクロウ」の「シマ」は北海道という島に生息することからきているそうです。

尾羽は短いけど翼と耳羽が長くて幅広。灰褐色の体で胸腹部には黒色の縦じま模様。

かつては北海道の広い範囲に生息していたけれど、木の伐採によって住む所がなくなったり、水質の悪化や河川の整備によって餌が取れなくなったりして、数が減っていき今では絶滅が心配されています。

夫婦で縄張りを作って、ずっと同じ場所で生活をするようです。
河川沿いに約10~15kmが行動範囲。
一生同じ夫婦で暮らし、繁殖は毎年するけれど、その成功率は高くないようです。
2月初旬から交尾し、2月末~3月中旬にかけて1~2個の卵を産みます。
卵は約35日で孵化。4月上旬~下旬にかけてですね。
孵化してから約50日で巣立ち。5月下旬~6月中旬かけて。
巣立ってから1~2年は親の近くで生活し、その後は旅立って行くようです。
繁殖をし出すのが、3~4歳とされているみたいです。
寿命は飼育されたもので30年程度。野生での寿命はわかっていない。

主にカレイやサケなどの魚を食べるけど、ウサギ、コウモリ、ネズミ、リスなども食べる。
ウサギやリスってけっこうエグイですね・・・。あまり想像したくない・・・。

一気に説明しましたが、だいたいわかっていただけましたか?

保護活動の一環として、広葉樹の苗木を植えてシマフクロウが生活しやすい森を作ったり、巣箱の設置や、冬にはいけすによる餌やりをしたりとさまざまな対策を行っています。
また、シマフクロウの生息地を保護区や保護林に指定するなどの対策も行っています。
繁殖成功数は増えているものの、減ってしまった生息地はなかなか元には戻らず、シマフクロウの数は増えないようです。

数が減っていく理由によくある、住む所の減少や車による事故というのは、ほとのど私たち人間の生活の便利さの犠牲なんですよね・・・。
せめて保護活動が実をむすんでほしいです。

ユルリ島とモユルリ島(根室)

根室半島南側、陸からの距離は一番近い場所で約2.6kmの場所にふたつの小さな島が浮かんでいます。

正直、このふたつの島を紹介するかどうか少し考えてしまいました。
それは、どちらの島も特別な許可がない限り、上陸が許されていないのです。

まずは、貴重なユルリ島の映像を見て頂ます。

『幻の島 ユルリ島』03/撮影 岡田敦
http://youtu.be/2uEWW-aAE8c

撮影者の岡田敦氏は、“写真の芥川賞”とも言われる、木村伊兵衛写真賞を受賞した、世界でも注目される北海道稚内出身の写真家。

この映像は、島の環境及び動植物の調査・研究のための許可のもと、上陸して記録されたものなのですが、それを遥かに越えた物語の様なものを感じます。

“ユルリ”というのは、アイヌ語で「鵜のいる島」という意味である“ウリリ”が語源で、“モユルリ”は、「小さなユルリ」という意味だそうです。
どちらの島も、断崖40m程の高さがあり、無人島であることもあいまって、アイヌ語の語源通り、海鳥(北方系)の営巣地になっています。

どんな、海鳥がいるのかと言うと、エトピリカ・チシマガラスなどの絶滅危惧種であり稀少鳥類に指定されているもの。
エトピリカは、ハトよりも少し大きめで、黒いからだに、白い顔、その先のくちばしはオレンジ色、目の上の部分から眉毛のように白く長い羽があり、一目見ると忘れられないインパクトが特徴です。
また、チシマガラスの方は、シルエットは正に鵜!
艶のある黒い身体で、夏は目の辺りが赤っぽくなるため、英名では“red faced”と言われるそうです。
また、頭の前方と後方の二カ所が、とさかの様に伸びるところも特徴で、サザエさんヘアーを連想させます。

そして、映像にも映っていますが、一番気になるのは、ユルリ島にいる馬。
そもそも、戦後、稚内は昆布漁で大いに賑わい、ユルリ島は、昆布の干場として活用され始め、馬はその際の運搬用に持ち込まれたのです。
しかし、段々と島での馬の役割は薄らいでゆき、馬を連れ帰ったところで、漁師達は放牧する場所を持っておらず、島にはエサとなる草も豊富に茂っていた事から、馬を残して島を去ることになりました。

やがて、馬は野生化し、世代を重ね、多い時で30頭程の馬が生息していたそうです。

しかしながら、2014年2月の記録で確認された馬は6頭、すべてが雌馬。
そう遠くないうちに、ユルリ島から馬はいなくなります。

人の足跡を感じさせる馬の存在は、単なる無人島にはない“何か”を物語っている様な気がします。

気象条件がよければ、根室市昆布盛の高台から、ユルリ島の灯台に付近にいる馬を見る事が出来るそうです。
また、岡田敦氏による映像も定期的にYouTubeにアップされます。
物語の終わりを、温かく見守りたいですね。

石灰華ドーム(二股ラジウム温泉)

北海道の南端にほど近い、長万部町(おしゃまんべちょう)。
ここのラジウム温泉が凄い!

奥深いところにありながら、明治の頃から、湯治客(とうじきゃく)が訪れていたという有名な秘湯。
“ラジウム”と聞くと、なんだか有害なものを含んでいる棟な気がしますが、“ラジウム温泉”は<ラドン元素とトロン元素を一定量以上含む温泉>を意味しており、(難しい事を抜きで簡単に説明すると)全く危険ではありません!!
寧ろ、このラドンとトロンという成分により、昔から多くの人に健康をもたらしてくれているのです。
この二股ラジウム温泉は、温泉法に基づいても、放射能濃度が基準値よりも低いため、無論、放射能線にも該当していません。

源泉に含まれる石灰によりできた、石灰華ドームは、さながら“湯の華の親玉”という感じで、含まれている炭素カルシウムは95.75%。これは、天然カルシウムでは最大の含有率だそうで、文句無しの天然記念物に指定されています。

世界で同じものがあるのは、世界最古の国立公園「イエローストーン国立公園(アメリカ)」のマンモス温泉だけですが、あちらには源泉に脳炎を引き起こす危険性のあるアメーバいるということで、顔をつけたり、飲んだりする事は推奨されておらず、水着着用で入浴しなければなりません。
つまり、ゆったりと入浴が可能なのは、世界でも二股ラドン温泉ただひとつ!ということになります。

さて、どんな効果が期待できるのかと言うと、神経痛・リウマチ・通風・腰痛などなどありますが、ノイローゼにも効果があるというから驚き。
また、飲めば、腎臓病や消化器病、膀胱炎や尿結石などなど、枚挙にいとまがありません。

偶然の自然環境のお陰で、もたらされた二股ラジウム温泉は、秘湯ではありますが、最早知る人の多い温泉となり、2001年には施設の立て替え工事も行なわれました。
男女別々の内湯と、2つの混浴内湯、露天風呂は女性専用と混浴の2つがあり、
天然記念物の石灰華ドームを見ながら入浴できるのは、混浴の露天風呂。

混浴となると、若い女性にはハードルが高いですが、別に混浴しなくても効果は得られますし、もしかすると運良く誰もいないかもしれません。
何にしても、天然記念物を織りなす歴史のある貴重な温泉です。
わざわざ訪れる価値は十分あり!

【場所】〒049−3501北海道山越郡長万部町大峰32
【電話】01377−2−4383
【日帰り入浴】大人:1000円/小人:600円
【URL】http://www.futamata-onsen.com
(トップページの下の方で、体験談もアップされていますので参考にしてみて下さい)

クマゲラ

ご存知の通り、黒い身体に頭の赤がかっこいいキツツキの一種。

日本では、北海道と秋田県・青森県などの東北のごく一部での生息も確認されていますが、森林伐採などによる生息地の減少によりその姿もなかなか見られないようになってきているのが現実です。

赤い後頭部が印象的ですが、オスとメスではその面積に違いがあります。
メスの場合は後頭部のみですが、オスの場合は額から後頭部にかけて赤色がはっきりと見えますので、もし遠くから見かける様なことがあったら、そこで見分けがつきます。
体長は、45〜57センチ程度で、日本に生息しているキツツキの仲間の中では最大で、名前にある“クマ”はクマゼミ同様“特大の”という意味。
また、クマゲラは、他のキツツキが丸い巣穴を開けるのに対して、楕円形の船の様な形の巣穴を彫る事からアイヌ語ではチップタッチカムイ(=船を彫る神)と呼ばれ、熊の居場所を教えてくれたり、道案内してくれると言い伝えられているのだとか。
動物学的な話をすると、木を突いているのは、エサであるアリを探したり、求愛の合図だったり、威嚇や縄張りの宣言などになっているそうです。

クマゲラは、緑の深い森林に生息し、その中で幹が平で滑らかな樹木を好んで地上4〜10メートル辺りに巣を掘って生活します。
5月下旬頃に3個前後の卵を産むと、オス・メス交代で卵を温めますが夜はオスがメインで卵のお守りをし、1ヶ月後にはヒナが誕生し、更にその1ヶ月後頃から巣立ちがはじまります。
クマゲラのオスは“イクメン”のようで、卵からかえった雛のお世話も殆どオスが行ない、巣立ちを促したり、見事巣から飛び出せるようになった後も、暫くはオスがエサを与えたりします。
そうして、雛鳥が完全に巣立てば、その年の10月には、もう家族としてのまとまりはなくなってしまうそうです。
(その間メスは一体何をしているのか非常に気になるのですが、調べても見つからなかったので、どなたかご存知でしたら教えて下さい。)
ただ、親鳥は子どもたちが巣立った後も、同じ巣穴に暫く住み続け、その期間は年単位になる事もあるそうですので、一度巣穴を見つけたらクマゲラの邪魔にならないように観察し続ける事も可能です。

ただ、クマゲラの数が減少しているのは、住処の減少だけではなく、そうした写真撮影目的の人々が押し寄せてしまい、クマゲラの縄張りが荒らされていることも原因のひとつなのです。
貴重な生き物の写真を撮りたい気持ちも分かりますが、森林は人間のルールだけがあるわけではない事をしっかり肝に銘じたいものです。

カラフトルリシジミ

カラフトルリシジミ
シジミ科の蝶。
間違っても、珍しい貝のことではありません!
日本では、知床山系・根室半島・然別湖など、北海道の高山帯や低地帯では湿原などに生息している、北海道固有の蝶。

体長は2センチ程度で、オスの翅(はね)は青紫色で黒い縁取りがついており、メスの翅はこげ茶っぽく、胴体付近がやや青みがかっています。
オス・メスともに、翅の裏側は淡い灰色で、翅の縁に幾つかの黒い斑点があり、一番外側には橙色の斑点がついており、翅を閉じている時に確認できます。

ぱっと見は、確かに青紫のオスの方が綺麗ですが、じっと見ていると、いやいやメスも渋いじゃないかと思えてきますし、翅についた斑点も蛾を連想させていたはずなのに、よくよくみると綺麗なことに驚きます。虫が苦手な人も、目にする事のできる幸運が訪れたら、騙されたと思って是非見てみて下さい。

幼虫の頃は、コケモモ・ガンコウラン(地面を這うように成長し、ブルーベリ—みたいな実をつけます)・クロマメノキ(スズランのように垂れ下がる白い花を咲かせ、こちらもブルーベリーのような実をつけます)で成長します。
どの、植物もツツジ科の植物で、かわいい実をつけます。

…キャベツを食べる蝶が可愛くないわけではありませんが、コケモモを食べる蝶だなんて、余計に特別感と可愛らしさと、妙な羨ましさまで感じてきます。

さて、話を戻しまして、それらの樹で成長し、冬を越し、7月頃に成虫になります。風が弱く穏やかな気候の時に元気に飛び回りますが、日が陰ると飛ぶのを止めます。
これは、高山蝶にはよくみられる特徴だそうです。

では、「陰った時がシャッターチャンスもしくは、捕まえるチャンス!」などと思うかもしれませんが、安易に手を出してはいけません。
国の天然記念物のみならず、レッドデータリストにも登録されている超希少種ですので、採取は禁止されています。
写真を撮るのはいいですが、傷つけないように注意しましょう。

また、カラフトルリシジミは、氷河期からその姿を変えていない生き物と言われていて、名前に冠してある樺太と北海道が、陸続きであった頃に、シベリアの方から南下しきて、そのまま生息するようになったと考えられています。

見た目だけでなく、彼らにまつわるエピソードもまた神秘的な生き物なのです。

夕張岳

現在の北海道の形の基本は、中生代白亜紀から新生代第三紀(約一億年前から約一千万年前)にかけてプレートの沈み込みにより東西北海道が接近し、ついには衝突することにより形成されたものです。

夕張岳は、この衝突により生じた北海道中央部を南北に走る脊梁山脈のうち夕張山系の南端近くに位置します。標高は1,668メートルの山で、夕張市と空知郡南富良野町にまたがり山域は北側の芦別岳と共に「富良野芦別道立自然公園」に指定されています。また、「花の名山」として知られ初夏から夏にかけての花のシーズンには全国から約4,000人もの登山者が訪れます。 蛇紋岩の土壌に適応し美しい花を咲かせる希少な高山植物が200種余り生育しています。これらの高山植物の群落は、「蛇紋岩メランジュ帯」と呼ばれる珍しい地形と共に、1996年には国の天然記念物に指定されています。

夕張山地の南端近くに位置し、主峰の座は芦別岳(標高1726.5メートル)に譲るものの、訪れる登山者は圧倒的に多いです。芦別岳は上部に蛇紋岩の露出地があり、複雑な地形と合わせて多種類の高山植物を見られるものと思います。夕張岳の高山植物群は、蛇紋岩の成分である超塩基性の成分と結びついたきわめて希少な蛇紋岩変形植物、氷河期の遺存種など夕張固有あるいは特異的な分布を示す高山植物で特徴づけられます。

夕張岳固有種としては、ユウバリコザクラ、エゾノクモマグサ、シソバキスミレなど、また特異な分布を示す植物としては、カトウハコベ、ナンブイヌナズナ、ミヤマハンモドキ、シロウマチドリ等があげられます。夕張岳の高山植物の組成はわずかな距離で変化し、北海道の山岳でみられる高山植物のほぼ全てが見られ、さらに夕張岳固有の植物が加わることで他では見られないほどの豊富で多様な様相を呈しています。
登山路は東西に各1コースありますが、札幌に近い西側の「大夕張コース」がかなり賑わっています。

【大夕張コース】
国道から登山口までの林道は約14キロメートルあります。「白銀橋」を渡って約5キロメートル地点にゲートがあり、“ヒュッテまで約9キロメートル”の案内板があります。ゲートの開放は6月~9月末までを予定され登山口には20台ほどの駐車スペースがあります。国道から登山口までは来るまで約30~40分ほどかかるでしょう。
登山ルートは「冷水コース」と「馬の背コース」の2ルートあります。

・冷水コース 標高差 1168メートル 登り4時間10分 下り2時間50分

駐車場ゲートから林道を10分程登ると右手に「冷水コース」があります。しばらく傾斜の緩やかな造材道が続き、傾斜がきつくなるとコース上はアマエゾマツの植林地を抜け樹林の斜面へと登っていきます。30分ほど登るとつづら折りの途中で数人なら十分に休憩できる場所があります。皿に0分ほど登ると第一の水場となる「冷水ノ沢」が。もう少し進むと「前岳ノ沢」もありますが水分量が少ないので、「冷水ノ沢」で補給するほうがよいでしょう。ここから北側に登り“馬の背コース”と合流する前岳の西尾根に出ます。尾根上はこれまでとは違い、北側には岩壁をまとった滝ノ沢岳(通称:姫岳)と東側には前岳を見上げられ展望がかなりよくなります。山開きの6月下旬頃から7月上旬には満開のシラネアオイ群落はまさに圧巻!この他、頂上までにたくさんの高山植物を見ることができます。花はもちろん、頂上から見る360度の大展望は今まで登ってきた疲れも吹っ飛ぶほどです。

・馬の背コース 登り4時間20分 下り3時間

先ほどの冷水コース登山口から分かれ、夕張岳ヒュッテ前にこのコースの登山口があります。登り一辺倒の辛さはありますが尾根の上に出ると所々で展望が利いて滝ノ沢岳が望まれてきます。この尾根には見ごたえのある冷温帯針広混交林が残っています。コース上には二つの顕著なコブがあり、道路脇の笹を摑まえながら登るほど急な「一ノ越」と、「二ノ越」は小さくすぐ先に冷水コースとの合流点となる登りがあります。どちらのコースもコースタイムに大きな違いはありませんが、通常オススメするのは登りが冷水コース・下りは馬の背コースとなります。(急な下りはちょっと怖い・・・という方はどちらも冷水コースで往復するほうがいいでしょう。)

夕張岳の上部には蛇紋岩という、普通の植物達の生育には都合の悪い地質が広がっています。そのためそれに耐えうる特殊な植物たちが分布しています。夕張岳の固有植物は、亜種・変種・品種(種のランク下の分類単位)を含み10以上数えることができます。また、湿原や岩場など多様な環境が揃っている為、シダ植物を含めると600種以上の植物が知られていてまさに“植物の宝庫”ともいえる山です。もちろん高山植物を持ち帰ることは犯罪になりますので、自分の足で山を登り、壮大な景色と一緒に高山植物たちを見て感動を味わってくださいね。

昭和新山

北海道有珠郡壮瞥町にある『昭和新山』は支忽洞爺国立公園に含まれる火山で標高398メートルあります。 1943年12月、有珠山周辺で前兆地震が始まり、翌1944年1月に入ると震源は次第に有珠山東山麓に集中するようになりました。

麦畑や集落、道路、鉄道であったところの地盤が隆起し始め、4月にはもとの地面から16メートル隆起しましたが、4月中旬からは隆起の中心は北方のフカバ集落へと移り50メートルほど隆起しました。
6月23日フカバ集落西方の畑から水蒸気爆発が発生し、10月末までに十数回の大きな爆発を起こし7つもの火口を作りました。7月には火砕サージが発生して湖畔の防風林や家屋が焼失しました。

その後も地盤の隆起は続き、海抜250メートルほどの潜在ドームとなりました。12月初旬には潜在ドームから三角形の溶岩ドームが姿を現し、1945年9月までに海抜407メートルの『昭和新山』が誕生しました。
昭和新山は成長の過程で地中の粘土が熱で焼き付き、赤褐色の天然レンガに覆われています。

また、川原石が溶岩ドームの中腹で見つかるなど、もともとそこが畑であったことを示す多くの証拠を見つけることができます。地表の温度は現在でも高いところで300℃ほどあるため、植生はそれほど見ることができませんが、山頂部は噴火後の攪乱により独特の景観を形成しています。一方山麓部では噴火から60年以上が経過してドロノキの林を見ることができます。

2010年に撮影された『昭和新山』の映像です。

火山活動当時は第二次世界大戦中で、食料もなく、フィルム・紙・衣類にも事欠く中、誰一人として研究する学者もいませんでした。
そんな中、地元の郵便局長 三松正夫さんがその成長の詳細な観察記録を作成しました。これは後年、オスローで開かれた「万国火山会議」に提出され貴重な資料となり“ミマツダイヤグラム”と名付けられ、多くの専門家に絶賛されたのです。

さらに三松さんは世界的にも貴重な火山の徹底的な保護と、家と農場を失った住民の生活の支援のために、昭和21年、私財をなげうって民家から山になってしまったこの土地を買い取ったのです。
このため昭和新山は三松家の私有地でもあり、ニュージーランドのホワイト島等と同じく、世界でも珍しい私有地内にある火山となりました。1951年には国の天然記念物に指定され、1957年には特別天然記念物に指定されました。

国内でも「第一回北海道文化賞」を始め数々の賞を受け、その功績が讃えられた三松さんは昭和52年、生涯3度目の有珠山噴火を体験しその活動の終幕を待たず12月8日病にて没しました。
御年89歳で亡くなられた三松さんの、自然を愛する思いは昭和新山の麓に銅像として蘇り、この山をいつまでも守り続けてくくれることでしょう。

現在、昭和新山の山麓には、三松正夫記念館が建っており、三松正夫による観測記録などの資料類が展示されているほか、昭和新山山麓駅から登るロープウェイ、麓にはガラス館やたくさんのヒグマが見れるクマ牧場などたくさんの見所があるのも楽しみの一つです。温度低下と侵食などによって年々縮んでいる昭和新山。現在も火山活動が行われていますが20世紀で最も新しい火山の一つを見に行きましょう。

【昭和新山】 住所:〒052-0102 北海道有珠郡壮瞥町昭和新山 TEL/0142-66-2750

昭和新山と見守るように建つ三松正夫さんの銅像 http://www.town.sobetsu.lg.jp/kanko/midokoro/syowa_sinzan/shinzan.jpg

アポイ岳高山植物群落

アポイ岳は、北海道様似郡様似町かつ日高山脈支稜線西南端に位置し、一等三角点(点名「冬島」)で標高810メートルの山です。日本列島は氷河期にサハリン・千島列島・朝鮮半島と陸続きだったため、北方系の植物が南下していて気候が温暖になった時、その一部がアポイ岳一帯に取り残され長い年月を経て適応しました。

指定地域は、アポイ岳の五合目(350メートル)付近から山頂までの登山道周辺と、山頂部分を中心として北陵沿いのピンネシリ(958メートル)から南稜沿いに延長7キロメートルの南北にほぼ細長い範囲を合わせた359.9ヘクタールで道有林です。

地名の由来はアイヌ語の「アペ・オ・イ」(火のあるところ)の意味があります。山は「幌満橄欖岩」と呼ばれているかんらん岩でできており、岩石の風化が遅い上に、風化してできた土壌は風雨で移動しやすく堆積しにくいという特殊な自然体系となっていることから、1952年に高山植物帯が「アポイ岳高山植物郡落」として国の特別天然記念物に指定されました。
1981年には日高山脈襟裳国定公園の特別保護区となりました。標高が低いわりに特殊な岩体のため森林が発達せず、「蛇紋岩植物」が生育する高山植物の宝庫として有名です。

海岸からわずか4キロメートルにあるこの山では、夏に発生する海からの濃霧が日光を遮って気温を低下させる一方、冬は太平洋側の気候で積雪量が少なく、低い山にしては地温が下がる為、2,000メートル級の高山と同じような気象条件になります。

春のアポイ岳に咲く高山植物たちの映像です。皆さんは全ての花の名前がわかりますか?

道内の山では1,000メートル以上でないとハイマツ帯、つまり高山植物帯が出現せず、800メートル前後の山であればエゾマツ・ドトマツ林になるのが普通ですが、アポイ岳では五合目から高山植物が場所によっては300メートルくらいからハイマツ群落が現れます。
これは、寒冷な気候と貧弱な土壌の為、高木が育ちにくく通常の植生にはならないからで、特に500m付近の馬の背中から頂上に至る西尾根に高山植物郡が見られます。そこを中心にヒダカソウ・エゾコウゾリナ・エゾイヌノヒゲ・アポイアザミ・アポイカンバ・サマニオトギリなど固有種や多くの固有変種を含め、80種類以上の貴重な植物が確認されています。

そして、山麓から広葉樹林帯、針葉樹林帯、ダケカンバ帯、ハイマツ帯と移り変わっていくはずの所、九合目から頂上にかけてハイマツ帯からダケカンバ帯に逆戻りしています。強風の影響が弱まっている為などとされていますが、下草にスズラン・ミヤマエンレイソウなどの山麓部の植物を伴っていてとても謎深い山と言えるでしょう。

【アポイ岳高山植物群落】
住所:〒058-0003 北海道様似郡様似町冬島 TEL/0146-36-2521

焼尻の自然林

焼尻の自然林は北海道西部の日本海側に浮かぶ島で、武蔵水道を隔てて西方にある天売島とともに羽幌町に属します。面積は約5.21k㎡あり、一市五町にまたがる広大な暑寒別天売焼尻国定公園の中にあります。
焼尻島には島の面積の3割ほどが国の天然記念物になっている自然林があります。かつてはニシン漁で栄えた漁業や生活を支える燃料として伐採され、強い海風にもさらされて巨木は少ないですが、身を寄せ合い複雑な生態系を作っています。
ミズナラ・イタヤカエデ・ナナカマドなど約50種類もの深い森に覆われていて、中央部の東側には落葉広葉樹が、谷筋には針葉樹が発達しています。
なんとも特徴的なのがこれらの上層林の下に高密度に生息している“イチイ(オンコ)”が随所にあることです。淡い色合いの亜紀の森に、緑濃いイチイは強いアクセントになりオンコ荘と呼ばれる珍しい地帯もあるほどです。

対馬海流に洗われているため、道北にしては温暖があります。海水浴場やキャンプ場を有していて、主たる産業は漁業と、ほかにも観光と畜産があります。畜産は食用羊のサフォーク種の国内有数の産地としても有名で道路から放牧風景も見られます。

しかしここは日本の北の外れ。。。冬の間は北西の季節風が吹きつけ、島は雪に覆われ厳しさを増します。焼尻島の観光シーズンは5月から9月。遠くに利尻、近くに天売。夏の間はたくさんの観光客が海上に浮かぶ草原を求めて訪れます。

広大な焼尻島の草原でのんびり暮らすひつじ達です。

アイヌ語「ヤング・シリ」(近い方の島)を語源とし、羽幌港からフェリーで約55分、高速船で約33分の船旅で着く周囲12キロメートルの小さな島です。多種多様の植物が繁る自然林や、数多くの小鳥達の水飲み場みなっている池や渓谷があります。
またはるにはカタクリやエゾエンゴサク、夏にはエゾカンゾウ、エゾスカシユリなど花の島とも呼ばれているほど数多くの花々が咲き、豊かな自然が魅力的な離島です。

島の中央部から東部に広がる原生林は、海から吹き上げる強風と降り積もる雪の重さのために高さを抑えられた特異な植生を示しており「焼尻の自然林」として学術的に貴重で、1983年には天然記念物に指定されました。
この国定公園には天売島の海鳥繁殖地ということもあり、こちらも天然記念物となっています。
2009年には『おんこ(イチイ)原生林と羊とアザラシ』で“島の宝100景”に選ばれています。

この狭い島で、森が果たす役割は暮らしに直結していました。北海道全体で、緑と水を守る先人の苦労と知恵は私達に受け継がれているのでしょうか・・・。
海も渡れる最も小さな船「シーカヤック」で焼尻島周辺を海から眺めるシーカヤックツアーが人気上昇です。
全くの初心者でも約1時間の指導と練習があり、インストラクターと共に行くので安心の体験が楽しめま!少ない時間でも楽しめるので、気軽に観光へ行ってみませんか?

【焼尻島】
住所:〒078-3871 北海道苫前郡羽幌町大字焼尻字緑丘 TEL/0164-62-1211
《主な交通機関》
高速船:羽幌港→焼尻港まで約33分
フェリー:羽幌港→焼尻港まで約55分